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- 世界の専門家たちに学ぶ - 他国との協力・相互運用の現状と展望 (2)
- 海外業務レポート (1)
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Reference Number(RN)とは
― NCSにおける役割と意味
はじめに
NATO Codification System(NCS)において、各物品は NATO Stock Number(NSN) によって一元管理されます。しかし、実際の調達や整備の現場では、各メーカーや規格団体が用いる部品番号や図面番号など、NSN以外の識別情報も多数存在します。これらを体系的に扱う仕組みが Reference Number(リファレンスナンバー、参考番号、以下RN) です。
本記事では、RNの定義、分類方法、関連するコード体系、そして防衛産業における実務的な活用について解説します。
1. RNの定義
ACodP-1によると、RNは以下のように定義されています。
「Reference Numberとは、生産品目を指定し、供給品を識別するために用いられる任意の番号であり、単独または他のRNと組み合わせて用いられる」。
RNには以下のようなものが含まれます。
- ・製造業者の部品番号(Part Number)
- ・製造業者の図面番号(Drawing Number)
- ・型式番号やモデル番号
- ・規格・仕様番号(ISO、MIL規格など)
- ・メーカーの商標名(商品名としてのみ識別される場合)
つまりRNは、各国・各企業が管理に使用する識別情報を包括的に扱う仕組みといえます。
2. RNと品目識別
NCSでは、物品の識別方法として「記述方式」と「参照方式」が定義されています。
- ・記述方式(Descriptive Method):品目の特性を記述情報で特定
- ・参照方式(Reference Method):メーカー番号など既存のRNを参照して特定
後者においてRNは特に重要であり、同じ供給品を複数のメーカー番号や規格番号で結びつける役割を果たします。
3. RNを補足するコード体系
RNはその性質や有効性を示すため、いくつかのコードによって補足されます。
(1) RNCC(Reference Number Category Code)
RNのカテゴリーを示すコードで、RNとNSNの関係性を規定します。
例:
- ・RNCC 1:ソースコントロールリファレンス
- ・RNCC 2:政府規格による決定的番号
- ・RNCC 3:メーカーによる設計管理番号
(2) RNVC(Reference Number Variation Code)
RNが「品目識別に十分か否か」を示します。
- ・Item Identifying:RNだけで特定可能
- ・Non-Item Identifying:追加情報が必要
- ・Informative:情報提供のみに使用
(3) RNFC(Reference Number Format Code)
RNの記録形式を示し、翻字や書式の改変があるかどうかを管理します。
(4) RNSC(Reference Number Status Code)
当該RNが調達に利用可能か、廃止・置換されたかなどの状態を示します。
(5) RNJC(Reference Number Justification Code)
同じRNが複数の供給品に現れる場合、その正当性を示すコード。
これらの補足コードにより、RNは単なる「部品番号」から、国際的に運用可能な識別情報へと昇華されます。
4. RNの種類と実例
ACodP-1ではRNを「Primary」と「Additional」に分類しています。
- ・Primary RN:供給品概念を直接形成する番号(例:設計管理番号、政府規格番号)
- ・Additional RN:補足的に管理情報を提供する番号(例:ベンダー図面番号、情報提供用リファレンス)
具体例
- ・MIL規格番号(例:MIL-E-1/515) → RNCC 2
- ・メーカー部品番号(例:ABC123-45) → RNCC 3
- ・代替品情報を示す参考番号 → RNCC 6
これにより、異なるソースからの識別情報を同じNSNの下に統合できます。
5. 防衛産業におけるRNの意義
防衛関連企業にとって、RNは以下の観点で重要です。
- ・調達の信頼性:顧客が参照するRNを正確に把握し、NSNと紐づけることで、確実に採用される可能性が高まる。
- ・市場参入:自社の部品番号がNMCRLに登録され、国際的に検索可能となる。
- ・代替品提案:廃止品や供給停止品に対して、RN経由で代替候補を提示可能。
- ・知財・設計管理:設計権限を持つRN(RNCC 3)は、企業の技術的な主導権を示す。
まとめ
Reference Numberは、NATOカタログ制度において「部品番号の国際言語」ともいえる存在です。単なる番号の集合ではなく、RNCCやRNVCなどの補足コードを通じて、物品と供給情報の関係性を明確に示す仕組みとなっています。
防衛産業の企業にとって、RNの理解は「自社製品が正しく世界に登録され、国際調達市場に参入している証」でもあります。今後ますます複雑化するサプライチェーンにおいて、RNへの理解は可視化への糸口となるでしょう。
本コラムの著作権は、一般社団法人日本類別協会に帰属します。無断転載・複製を固く禁じます。
YOUSUKE HATTORI
About Me
1985年東京都生まれ。一般社団法人日本類別協会代表理事。学生時代よりMILスペックをはじめとする規格分野に関わり、長年にわたり知見を積み重ねてきた。防衛装備庁へのNATOカタログ制度導入や2020年のTier2昇格に携わり、その後の本格運用を支援している。環太平洋NATOカタログ制度セミナーなど国際会議にも出席し、日本の同分野における国際的な連携と発展のため尽力している。