ACodP-1とは何か
〜NATOカタログ制度の国際規格マニュアル〜
1. ACodP-1の定義
ACodP-1(Allied Codification Publication No.1)は、NATOカタログ制度(NCS)の運用に関する包括的な規定・手順をまとめた公式文書です。
正式名称は”NATO Manual on Codification”で、NATO加盟国およびパートナー国のNational Codification Bureau(NCB:国家類別局)が参照する標準的なNCS運用ガイドラインとなっています。
ACodP-1は、NCSに関する全体像から細部手順までを体系的に規定しており、加盟国間で統一的かつ相互運用可能な物資管理を実現するための基盤となっています。
2. 位置づけと役割
NCSは複数のSTANAG(例:STANAG 3150, 3151, 4177, 4199, 4438)によって運用ルールが定義されていますが、ACodP-1はこれらSTANAGを実務に落とし込む“マニュアル”として機能します。
- ・STANAG:何をどう標準化するかを合意した「規格」
- ・ACodP-1:その規格を各国が実施するための「詳細手順書」
例えば、STANAG 3151で定められた品目識別のルールを、ACodP-1では実際の番号付け方法やデータ交換フォーマットまで掘り下げて解説しています。
3. 主な構成(例)
ACodP-1は章ごとに明確に分かれており、各国NCBが必要な情報をすぐに参照できる構造になっています。以下は主要な内容例です。
1.各国NCB(National Codification Bureau)の役割
- ・自国でのNSN管理、データ審査、登録、更新、削除に関する義務
- ・他国とのデータ共有に関する手順の厳格な順守
2.類別作業の標準化
- ・品目名(INC)、識別特性項目(MRC)、データ品質の基準
- ・記述形式の選定指針
3.国際協力とデータ交換
- ・NMCRL(NATO Master Catalogue of References for Logistics)への情報提供義務
- ・NATO所定のデータ交換プロトコルに則ったデータ送受信の義務
4.規律と監査体制
- ・定期的なデータ品質レビュー
- ・各国の遵守状況に応じたAC/135(NATOカタログ委員会)による評価と指導
4. 改訂と維持管理
ACodP-1はNATO支援調達庁(NSPA)および加盟国のNCBによって共同で維持・改訂されます。
- ・新技術や業界標準の変化に合わせて定期的にEdition(版)が更新
- ・更新は加盟国・スポンサー国に配布され、各国の国内制度に反映されるものとされています
- ・電子版も一般的に利用可能
5. 産業界における重要性
防衛産業や関連サプライヤーにとって、ACodP-1は「国際調達市場で通用するためのルールブック」ともいえます。
契約対応力の向上
- ・契約書に出てくるCCCや類別原資料要求の背景を理解できる
データ整備の指針
- ・品目情報の登録・更新に必要なデータ項目やフォーマットが示される
特にNCS関連業務を受託する場合、ACodP-1の該当章を理解しておくことで、手戻りや納期遅延を防ぎやすくなります。
6. まとめ
ACodP-1は、NCSを実務レベルで運用するための国際的な共通マニュアルであり、STANAGで合意されたルールを現場に適用するための橋渡し役を担っています。
防衛関連の国際取引に関わる企業や組織にとっては、ACodP-1については直接的に目にする機会はないかもしれませんが、契約相手方としての理解は単なる知識ではなく、より円滑に契約から納入を進めるための位置要素とも言えるかもしれません。
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YOUSUKE HATTORI
About Me
1985年東京都生まれ。一般社団法人日本類別協会代表理事。学生時代よりMILスペックをはじめとする規格分野に関わり、長年にわたり知見を積み重ねてきた。防衛装備庁へのNATOカタログ制度導入や2020年のTier2昇格に携わり、その後の本格運用を支援している。環太平洋NATOカタログ制度セミナーなど国際会議にも出席し、日本の同分野における国際的な連携と発展のため尽力している。