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Category
- I.NCSを知る
- 制度の基礎と仕組みを学ぶ - NCSとは何か? (4)
- NSNとNCAGEの基本 (1)
- STANAG (3150~) の役割 (0)
- 日本の制度との関係性 (1)
- II.NCSの最新動向
- 国際ルールと制度のいま - III.実務と事例で学ぶ
- NCS活用の現場から - NMCRLを使った市場調査 (0)
- 協会支援の活用事例 (1)
- 輸出関連の手続きサポート例 (0)
- IV.用語と制度のポイント解説
- Codification Contract Clauseとは? (1)
- NCAGE取得の注意点とFAQ (0)
- 用語解説 (6)
- V.これからのNCS
- 技術と制度の未来 - VI.Voices from Our Colleagues
- 世界の専門家たちに学ぶ - 他国との協力・相互運用の現状と展望 (2)
- 海外業務レポート (1)
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Codification Contract Clause(CCC)とは何か
〜防衛調達とNCS運用をつなぐ契約条項〜
目次
1. CCCの位置づけ
Codification Contract Clause(以下CCC)は、**調達契約の中に「NATOカタログ制度(NCS)に必要なデータ提供を義務付ける条項」**として盛り込まれるものです。
これはSTANAG 4177(Uniform System of Data Acquisition)で明文化されており、NATO加盟国やTier 2国が物品や部品を調達する際、契約の段階から類別(品目登録)に必要な情報を確保するための仕組みです。
2. なぜCCCが必要なのか
NCSの運用では、品目を一意に特定するための設計情報・製造者情報・参考番号などの技術データが必須です。
しかし、契約に明記しなければ、メーカーやサプライヤーがデータを提供する義務はなく、後追いで依頼しても対応が遅れることがあります。
CCCを契約に含めることで、
- ・納品時点で必要データが揃う
- ・設計管理国が迅速にNSNを付与できる
- ・多国間でのデータ共有が可能になる
- というメリットが得られます。
また、NATO加盟国やTier 2国間で輸出入が行われた製品の場合も同様に、最初期には類別作業を行う必要があります。この場合、上記の国家間においては調達国から製造国へ類別を依頼することとなります。この際、CCCを調達国およびメーカー・サプライヤーの間で締結をしている場合には、この技術データは直接、メーカー・サプライヤーから製造国の担当部署へ提供することとなります。これは企業の技術データを不用意に国外に持ち出す機会を減らし、企業にとっては知財の保護にもつながる内容となります。
3. CCCの基本構成(STANAG 4177 Annex Aより)
CCは契約書の条文として以下のような要素を含みます。
- 1.定義
- ・Codification Authority(類別当局):設計管理国のNCB(National Codification Bureau)や指定機関
- ・Contracting Authority(契約当局):調達を行う国の調達機関
- ・Technical Data(技術データ):図面、仕様書、標準類、型式情報など品目識別に必要な資料
- 2.提供義務
- ・契約対象品目の識別に必要な技術データを、指定期間内にCodification Authorityへ提供すること
- ・電子データの場合はアクセス先URLや必要な認証情報も含める
- 3.更新義務
- ・契約期間中に設計変更や仕様改訂があれば、その都度データを更新して提供
- 4.下請け契約への継承
- ・元請けは、下請け契約にもCCC同等の条項を含める責任を負う
- 5.非加盟国メーカーへの対応
- ・非NATO国のメーカーから調達する場合も、元請けがデータを取得し提供する義務を負う
4. 実務上のポイント
CCCは単なる形式条項ではなく、実務面で次のような配慮が必要となります。
- ・契約前の事前合意
メーカーやサプライヤーに対し、CCCの趣旨と必要なデータ範囲を事前に説明・合意し、取扱い条件を明確にする。特に営業秘密扱いの情報については、企業側が主体となって非開示とすることができます。
- ・フォーマットの標準化
提供データのフォーマット(図面形式、ファイル形式、コード体系)を統一し、後工程での入力作業を簡略化します。
- ・納期設定
納品スケジュールに合わせてデータ提出期限を設定し、類別作業と並行処理できるようにします。
- ・監査・検収
データが規定条件を満たしているか、契約検収時にチェック項目として組み込みます。
5. CCCがない場合のリスク
CCCを省略すると、次のような問題が生じる可能性があります。
- ・十分な技術データが用意できず、NSN付与が遅れる
- ・類別に関する技術データの取り扱いについて定義されない
- ・類別データの開示・非開示についての協議の場を設定しにくい
特に国際共同開発や外国製部品の調達では、CCCがないと情報の非対称性が顕著になるか農政があり、また他国への輸出の際にもCCCが含まれているか否かによって、自国NCBへの技術データ提出についての対応が異なります。
6. 日本企業にとっての意義
日本はNCS協賛国ですので、防衛装備品や部品を輸出する場合、契約相手国の仕様としてCCCが要求されるケースがあります。
- ・NCS対応のビジネス準備
取扱品目に関する図面・仕様書・部品番号体系を整理し、NCAGEコードや参考番号と紐づけられる形で管理することが望まれます。所謂、類別原資料の手配が日本NCBに対して必要になる場合があります。
- ・輸出競争力の向上
CCCに対応することにより、調達国側では自国で類別する作業コストが発生しなくなります。そのため、事前に当契約条項を認識することによって契約条件をスムーズに満たし、納期・信頼性の面で優位に立つことができます。
まとめ
CCCは、NCSのデータ品質と運用スピードを確保するための「契約上の安全弁」です。調達契約の時点でデータ提供義務を明文化することで、後工程の遅延や不確実性を防ぎ、国際的な兵站の共通基盤を守ります。
また、企業にとっては、提出した技術データを類別以外では使用されないことを約束するものとなります。防衛関連の国際取引に関わる事業者にとっては、この条項の意義と実務運用を理解することが、自社の競争力と信頼性を高める鍵となります。
本コラムの著作権は、一般社団法人日本類別協会に帰属します。無断転載・複製を固く禁じます。
YOUSUKE HATTORI
About Me
1985年東京都生まれ。一般社団法人日本類別協会代表理事。学生時代よりMILスペックをはじめとする規格分野に関わり、長年にわたり知見を積み重ねてきた。防衛装備庁へのNATOカタログ制度導入や2020年のTier2昇格に携わり、その後の本格運用を支援している。環太平洋NATOカタログ制度セミナーなど国際会議にも出席し、日本の同分野における国際的な連携と発展のため尽力している。