NCAGEコードの取得方法と活用戦略

update:2025/9/22

― 国際防衛市場での「企業のパスポート」 ―

1. NCAGEコードとは何か

国際的な防衛・物流の取引や契約において、企業や組織を確実に識別するための共通言語が「NCAGEコード(NATO Commercial and Government Entity Code)」です。

ACodP-1では、NCAGEを「商業企業、政府機関、その他の団体を一意に識別するための標準的な識別子」と定義しています。このコードは、製造者、供給者、設計権者(Design Authority)、さらには輸送業者やサービスプロバイダー(役務提供者)まで、幅広い主体に付与されます。

特にNATOカタログ制度(NCS)では、NSN(NATO Stock Number)の登録やデータベースへの反映において、供給元や製造元を識別するためにNCAGEコードが必須となります。

2. NCAGEコードの構造と割り当て

NCAGEコードは5桁の英数字で構成されます。

例:

  • J1234:日本のNCB(National Codification Bureau)が発行
  • ・F5678:フランスが発行
  • ・C9012:カナダが発行

各国所定の手順・規則に基づき、国ごとに定められたナンバリング方法で各国のNCBまたは指定機関がコードを管理・発行します。

ACodP-1では、NCAGE登録時に「その組織が果たす役割(Manufacturer, Supplier, Design Control Authority など)を併記すること」を求めています。これにより、単に企業を識別するだけでなく、その立場や責任範囲を明確にできます。

出典:NATO Allied Committee 135(AC/135)

3. 取得手順

1.申請先の確認

NSPAのサイトを通じ、各国のNCBまたは指定窓口に申請します。

日本の場合、防衛装備庁がNCBとして窓口業務を担います。

(Link: https://eportal.nspa.nato.int/Codification/CageTool/home

2.必要情報の準備

  • ・企業名(正式名称・英語表記)
  • ・所在地・連絡先(電話・メール)
  • ・事業内容(製造・販売・役務提供)
  • ・企業識別番号(法人番号など)

3.申請書の提出

申請はオンラインで行われます。所定の申請webフォーマットに準じ、NSPAのサイトにて入力・提出できます。

4.審査

NCBは既存データとの重複を確認し、申請企業の実態や活動内容をチェックします。

5.発行・登録

コードが発行されると、NMCRL(NATO Master Catalogue of References for Logistics)に登録され、情報が公開されます。

6.更新義務

住所変更や社名変更、事業内容の変更時は速やかに更新申請を行う必要があります。

4. 実務における活用戦略

(1) NSN取得の前提条件

NCAGEはNSN登録時に供給者・製造者情報を特定するためのキー項目です。製品に関する入札・契約行為を行う前に、まずNCAGEを確保しておく必要があります。

(2) 国際契約における信頼性確保

多くのNATO加盟国や防衛省関連契約では、入札参加条件としてNCAGEの記載を求めています。コードがあることで、契約相手国は企業の正式性と所在を確認できます。

(3) 海外パートナーとの取引効率化

契約書や技術仕様書、輸送書類などにNCAGEを記載すれば、相手国のシステムで自動的に組織が紐づけられ、やり取りの効率が向上します。

(4) 市場調査への活用

NMCRL検索を使えば、特定製品の供給者や競合企業のNCAGEを確認でき、営業リストや調達先候補の選定に活かせます。

5. 注意点

信用度の保証ではない

NCAGEは企業の存在を識別するものであり、信用度や契約履行能力を保証するものではありません。

更新の重要性

情報が古いままだと、思うように連絡がつかず、契約や調達プロセスで不利益が生じる可能性があります。

・英語情報の整備

国際市場での活用を見据え、企業情報の英語版を正確に整備しておくことが望まれます。

6. まとめ

NCAGEコードは、防衛・物流分野における「企業のパスポート」です。取得自体は比較的簡単ですが、NSN登録や国際契約、輸出入業務の際には不可欠なキー項目となります。

ACodP-1の規定に沿った正確な申請・更新と、戦略的な活用により、国際市場での存在感と信頼性を高めることができます。

YOUSUKE HATTORI

About Me

1985年東京都生まれ。一般社団法人日本類別協会代表理事。学生時代よりMILスペックをはじめとする規格分野に関わり、長年にわたり知見を積み重ねてきた。防衛装備庁へのNATOカタログ制度導入や2020年のTier2昇格に携わり、その後の本格運用を支援している。環太平洋NATOカタログ制度セミナーなど国際会議にも出席し、日本の同分野における国際的な連携と発展のため尽力している。

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