NATO Codification System(NCS)の基礎知識と活用法

update:2025/9/19

―国際的な共通制度を実務にどう活かすか―

はじめに

前回の記事では、NATO Codification System(NCS:NATOカタログ制度)が「防衛物資管理の国際共通言語」として整備された経緯や、日本を含む参加国の状況についてご紹介しました。

今回は、NCSの具体的な仕組みと、その中で重要な役割を担う NSN(NATO Stock Number)NCAGEコードNMCRL といった要素に焦点を当てます。また、それらを活用することで得られるメリットや、企業がどのように制度をビジネスに取り込めるかについても整理します。

1. NCSの基本構成要素

NCSは、大きく以下の3つの仕組みで成り立っています。

  • NATO Stock Number(NSN):軍需品を一意に識別する統一番号
  • NCAGEコード:供給者・製造者を識別するためのコード
  • NMCRL:物品に関する情報を集約した国際的データベース

これらが連動することで、物品・企業・情報を結びつけ、国境を越えた物資管理を可能にしています。

2. NATO Stock Number(NSN)の役割

NSNは13桁の番号で構成され、物品を世界共通で特定する仕組みです。

  • ・前4桁は物品の分類(NSC)
  • ・次の2桁は登録国を示す(NCBコード)
  • ・最後の7桁はアイテム固有番号

この仕組みがあることで、米国で作られた部品もフランスで作られた部品も「同じ物なら同じ番号」で認識されます。結果として、重複調達の防止、在庫の効率化、多国籍部隊における補給の円滑化が可能となります。

3. NCAGEコードと企業の参入機会

NCAGE(NATO Commercial and Government Entity)コードは、供給者や製造者を特定する5桁のコードです。これを取得することで、NCS上で公式に認識され、国際調達市場に参入する道が開かれます。

  • 取得プロセス:申請 → 各国担当省庁による企業情報登録 → コード付与
  • メリット:国際的な信頼性確保、NSNとの紐付けによる販路拡大・管理

特に米国防総省の調達システム「SAM」への登録にも活用されるため、日本企業にとっても実務上の重要性は高まっています。

4. NMCRLの活用方法

NMCRL(NATO Master Catalogue of References for Logistics)は、世界中で割り当てられたNSNや関連情報を収録したデータベースです。

企業が活用する場面としては:

  • ・市場調査(競合や供給実績の把握)
  • ・信頼できる調達先の選定
  • ・在庫・代替品管理

単なるリストではなく、国際的なサプライチェーンを可視化する強力なツールです。

5. NCS活用のメリットと展望

NCSを導入・活用することで、以下のような成果が期待できます。

  • 調達プロセスの効率化:共通番号に基づく迅速な取引
  • コスト削減:重複調達を防ぎ、在庫を最適化
  • 国際市場参入の加速:NATOや加盟国案件へのアクセス向上
  • 相互運用性の強化:多国籍部隊での連携支援

今後はデジタル化の進展により、データベースを活用した高度な市場分析や供給網管理への応用も広がると考えられます。

6. JPNCAが提供する支援

一般社団法人日本類別協会(JPNCA)では、企業がNCSを有効に活用できるよう、以下のサービスを展開しています。

  • ・SAM登録支援
  • ・NMCRLを用いた市場調査
  • ・NCSの最新情報提供
  • ・制度導入コンサルティング

海外調達市場への参入や国際共同事業への対応を検討する企業にとって、有益なサポートとなります。

まとめ

NATO Codification System(NCS)は、防衛物資の国際調達を効率化するための共通基盤であり、NSN・NCAGEコード・NMCRLといった要素を通じて、物品と供給者、情報を国際的に結びつけています。

制度を理解し、適切に活用することで、調達の効率化やコスト削減だけでなく、国際市場での競争力強化にもつながります。日本企業にとっても、NCSは単なる制度ではなく、実務的に取り組むべき重要な仕組みであるといえるでしょう。

YOUSUKE HATTORI

About Me

1985年東京都生まれ。一般社団法人日本類別協会代表理事。学生時代よりMILスペックをはじめとする規格分野に関わり、長年にわたり知見を積み重ねてきた。防衛装備庁へのNATOカタログ制度導入や2020年のTier2昇格に携わり、その後の本格運用を支援している。環太平洋NATOカタログ制度セミナーなど国際会議にも出席し、日本の同分野における国際的な連携と発展のため尽力している。

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